ビジネスソフトウエアの著作権問題の重要性
『日本工業新聞4月11日号』
発行:日本工業新聞社
CEO 中井正和
2003年4月
ビジネスソフトにおける、違法コピーの実態についての実態と
企業収益に及ぼす重要性を提言
ビジネスソフトウエアの著作権問題の重要性」
本当の市場を把握しなければ実態すら掴めない
インテレクチュアルアセットマネジメント株式会社
代表取締役 中井正和
日本知的財産戦略協議会理事
ダムが一度決壊すると、その水の流れを食い止めることはできない。ビジネスソフトウエアの著作権問題は、その侵害が一度堰を切ったなら、もはや打つ手は無い。対策のポイントは、 企業自らが著作権 に関する総合的なビジョンを打ち出し、それに沿って活動を始めることにある。
「多くの企業は、著作権侵害により打撃を受けていることよりも、現実の市場のごく一部でしか売上を上げていないという事実を認識するべきである」と、インテリジェン社の CEO チー・チュン・ウェイは警告する。インテリジェン社 (本社シンガポール)は、アジアを始め、世界各国に拠点を置く知的財産コンサルティング会社である。
コンピュータソフトウエアの権利保護団体 Business Software Alliance ( BSA )は 6 月 3 日に、昨年度のパソコン用ソフトウエアの違法コピーに関する調査結果を発表した。被害総額は全世界で 130 億ドルと、前年の 109 億ドルに対し 19 %も増加した。日本国内の違法コピー率は 35 %で、その損害額は中国、米国に次いでワースト 3 位となった。しかし、これらは現実の市場を把握した数字ではない。現実の市場を想定したならば、損害額はさらに膨れ上がることになろう。
では、いかなる対策が必要なのか。著作権侵害を防ぐための技術は、日進月歩である。たとえば、光ディスク上には、ソース特定コードであるSIDシステム(Sources Identification Code)が刻まれている。ソフトのインストール時には、ネット経由でライセンス登録を行う方法が一般的になりつつある。ただし、これらの偽造、コピー回避策も決して万全ではない。
問題は、企業の視点が、既存あるいは潜在顧客への対策の実施のみに向けられていることにある。被害額の算定においても、また対策技術の開発においても、顕在化したごく一部の被害への対策しか考慮されていない。
ビジネスソフトウエア事業における投資回収率を最大にするには、企業自らが、著作権に関する総合的なビジョンを打ち出し、著作権収益拡大に向けて営業、販売、広報部門が一体となった活動を進めていくことが必要となる。(別表)これらの対策がうまく機能すれば、大幅増収と市場の拡大ということが期待できる。政府の施策や司法に訴えることでは解決にはならない。ダムが決壊した後にあたふたと慌てるよりも、ダムが決壊しない方法と対策を、企業は急がねばならないのである。
「著作権保護対策」
1.市場調査と情報収集
2.政策と現場の両レベルでの事前広報活動
3.侵害者に対する法的措置
4.偽造防止手段の開発
(問い合わせ)
インテレクチュアルアセットマネジメント株式会社
中井正和
http://www.intellectual.co.jp