インテレクチュアルの評価手法
無形資産に関するリスク評価においては、絶対的な技術評価よりも、どのようなライセンス契約を保有しているか、若しくはどの契約条項を取り入れるか、契約の期間および期間設定はどうなっているのかなど、ビジネス活動を主眼としたてさまざまな契約の形をシミュレートした現実的な評価が必要となります。
インテレクチュアルの評価算定手順
1. 概要 2. リスクの反映 3. スピードの反映 4. タイミングの反映 5. 当事者の思惑の反映 6. 決定要因の振り分け 1. 概要 特許をはじめとする無形資産の価値を、環境や契約対象、状況判断によって相対的に変化する価値とみなしていくつかのパターンを作成し、それらのパターンを統計的に解析、さまざまなリスク解析を行い、プロジェクトの進行に応じた無形資産の価値算定を行います。 リアルオプションの妥当性について いくつかの本で書かれているリアルオプションを利用した知的財産評価モデルでは、ブラック・ショールズモデルから導いた公正価値を、無形資産の価値算定の試算値としておりますが、流動性を前提とした裁定が常に働く金融市場のモデルを無形資産の評価手法として使う場合に、さらなる考察が必要となります。 企業活動を前提として評価する場合、そこには交渉というマーケットが存在します。インテレクチュアルでは、モディファイドブラックの公式を利用することで、対象資産をすべて変数化し、 評価する側、評価される側、評価される資産を持っている側がインタラクティブにお互いの主観を反映して価格算定要素を決定、より現実の取引に近い形で評価算定することを実現しました。 これにより、不確定な将来の収益やコストを計る上で非常に重要な、タイミングやスピードといった時間的要素を直感的に分かり易く表し、実勢に近い取引価格にフィットさせる工夫と修正が可能となります。 2. リスク算出について − リスクの反映 − 対象資産の将来の収益予想を算出するには、過去の傾向を統計的にはじき出したリスクによって割り引く必要があり、そこでは、線引きとウエイトが重要となります。多くのサンプルは、数量化理論を適応することで、統計的に処理することが必要となります。また、この手順に基づいて導きだされた定数および係数などを利用することにより、ライセンサー、ライセンシーの擬似的な相対関係を実現し、現実的な交渉においても利用できる、公正価値を求めることが可能になります。 蓄積されたサンプルデータは、与えられた条件において必要とされる主体側の定性的要因として、価格算定プロセスの各局面における定性的要因の不確実性要因からくるリスクプレミアム算出の参考にします。 3. 市場価値低減曲線の機能について −スピードの反映― 知的財産においては、時間的推移に重大な意味があります。特許の利用についての意思決定、交渉、取引決定等をいかに迅速にするかは企業の収益に大きく左右し、迅速な製品化への努力という「スピード」が、コスト削減、もしくは機会損失の縮小という観点から非常に重要となります。 投資においては、少々待ってマーケットの動きを見極め、情報を手にすることで不確実性を減らすということができます。しかし、それらは将来において同様のマーケットが存在するという不確定な前提の上で成り立つことであり、無形資産においては、そこに減損される価値というものを定義する必要があります。
4. 収益構造モデル の機能について 5. 当事者の思惑の反映 − 実際のライセンス契約におけるライセンス料は、数理統計的な裏付けよりも、ライセンサー(売り手)、ライセンシー (買い手)における力関係、思惑、期待などの定性的なもので決められています。 右図は、これを分かりやすく座標で示したものです。 X軸で表される市場商品化率 (p) は、基本的にライセンサーの収益配分に比例する。つまり市場性の高い特許の場合は、相対的にライセンサーの配分も高くなることを表します。ここでいう「市場性」とは、その事業もしくは商品が、市場に受け入れられやすい、投資案件して比較的安全である、利益を予測することが簡単であるという、主観的基準を表します。Y軸で表される特許投資バリュー(w) は、ライセンシー側、もしくは投資家が、当該特許にどれだけの価値(バリュー)を認めるかという、バリュエーションを表します。 ライセンスの単位を売上の何パーセントにするのかという場合、売上の規模の大きさにより、技術(特許)の貢献度にかかわらずパーセンテージが変わります。たとえば、自動車関連の特許だと、貢献度が高くても、マーケットが大きいので、売上の1%とかになり、同じ特許が玩具に使われる場合、売上の25%という契約も可能です。このように、膨大な資本を必要とする場合は、必然的に投資バリュー(w)は上昇し、最終的には、市場商品化率および投資バリューのそれぞれの数値は、最終還元利回りに基づき、相対的に決められます。 未公開株式の取引価格を決定する際、将来予測、投資環境、財務状況などが、財務諸表や資本政策でおおよそ推定されますが、実際の値決めの段階では、どれだけのシェアが欲しいか( 67%以上で経営権を確保したい、10%以内に抑える・・・、2回目の増資で30%を確保したい・・・等々)などの思惑が重要です。つまりその評価対象(投資案件)にどれだけのコミットメント(思い入れ)、レスポンシビリティ(責任)を感じているのかが大きなポイントとなります。 特許でいえば、とりわけ発明者や出願者がどれだけコミットして、また発明に帰するアイデアや技術、実現するための能力などがどれくらい備わっているのかなど、特許の主体者のかかわり具合、依存度、技術力などがこれにあたります。 もうひとつは、買収もしくは増資する株価にどれくらいのバリュエーションを与えるかという部分です。これらは、投資家がそのビジネスにどれだけの期待(不安)を感じているのか、またその先にあるIPO時の予測売り上げから期間的な要素を加味して、逆算して価値をきめることも考えられます。つまり、評価対象(投資案件)の本質的な可能性や投資家の持つ期待と思惑は、バリュエーションというもうひとつの数値に変換されます。 特許やライセンス契約の状況で考えた場合、その特許やビジネスに対する期待度や、肌で感じるリスク、または成功の確率、失敗の確率、マーケットの将来性や技術に対する理解度(又は理解度のなさ)、社内での予算の取り込みが可能かどうかの憶測などがこの数値に集約され、実際のライセンス契約の際の値決めに反映されます。グラフでは、この 2つの要素を、X、Y軸で2次元に表しています。 6. 要因の振り分け 知的財産を例に取ると、事業全体そのものの評価から、技術部分の評価額を算出し、そのなかから、技術や知的財産権に帰属される価値の部分を抽出させることは非常に難しいことですが、これらのプログラムを利用することにより、直感的に価格算出のメカニズムが簡単に理解できるようになります。 (問い合わせ) インテレクチュアルアセットマネジメント株式会社中井正和 nakai@intellecutal.co.jp http://www.intellectual.co.jp |
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