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知的財産サロン 知 的 財 産 サ ロ ン:『フジサンケイ ビジネスアイ』オピニオン面「知的財産サロン」毎週金曜日掲載

2004/3/12紙面掲載
あなたもなれる? 発明長者[2] 発明の対価の知識を持とう
規定を見れば企業の姿勢が分かる
収益の増加に応じて報奨金が変動するケースはまだ少数
「知財ビジネス&ビジネスシステム」中岡浩

■発明の対価がきちんと得られる規定があるか■

 知財関連規定や職務規定などでは、研究者を発明者と認めながらも、発明の権利の帰属については企業への譲渡や継承をうたっている場合が多いので、研究者は、この理由をよく理解しておかねばならない。
研究者が特許権を得た場合、企業には通常実施権が与えられる。通常実施権は、特許法三五条に定めがある企業の権利で、企業は職務発明を無償で行う権利を持っている。ただし、これは使用する権利であって、発明の権利そのものの保有を認めたわけではなく、企業が事業を遂行する際においては十分な権利とはいえない。企業は自ら特許権者となる方がよく、このために規定を設けて、権利の移転を可能にしようと考えるのである。
また、業務発明や自由発明は、これらの対象にはならない。もし、研究者に職務発明と通常実施権の知識がなければ、すべての発明は無条件に企業に帰属するものだと思うだろう。
 少なくとも、日本の法律下では企業と発明者の権利双方が認められているので、企業の作成した規定において、発明者の権利を一方的に認めていないままになっている場合があるならば、これは研究者にとっては要注意である。研究者を単なる使用人、研究の成果は単なる労働の結果としか考えていない企業だということになる。滅私奉公せよという経営者は、いまだにいるものだ。
 最大のポイントは、企業に権利を移転する際の報奨金規定の有無と、その評価、支払いの時期・方法である。職務発明の場合、特許法三五条で企業が発明者から権利を受ける際に、通常実施権の場合を除いては、発明の対価を支払うことが決められている。まずは発明の対価がきちんと得られる規定があるかどうかをチェックしておこう。
一般的に報奨金は特許出願したとき、特許登録した時、そしてそれら発明によって収益が上がった時に支払われる規定が多いようである。
職務発明であるからには、発明者が企業と雇用関係にあることが大前提となる。労働契約書に発明に関することまで言及している企業はまずないと考えられるが、少なくとも自分が正社員か契約社員か、労働契約書に何が書かれているかなどを、確認しておくべきだろう。
 労働契約書には通常、就業規定等の順守が示されているので、発明についても就業規定等を参照することになる。ただし、就業規定等がない場合、労働契約書に明記しなくてはいけないことになっているので、注意する必要がある。

■水面下でこれまでの報奨残額を支払う動きも■

 近年、企業では報奨金額を見直す動きが出ている。一部の大企業では上限を一億円とか、上限なしにするなど、これまでよりかなり高額に設定してわざわざ発表するところもある。
 一方、これまで発明時の一時金しか支払わなかった企業が、水面下でこれまでの権利発生期間中の報奨残額を粛々と支払う動きも出ているようだ。こういった動きは、とりもなおさず青色発光ダイオード(LED)特許訴訟のような訴訟を起され、巨額の賠償金を支払わされたり、企業イメージを棄損したりするリスクを回避するのが狙いである。
 そういう意味では、優良と言われる企業や上場企業の場合、発明者に対する報奨規定を設けることが一般化してきている。しかし、中堅・中小企業や未上場企業ではまだまだ十分に浸透はしていない。また企業の規模によらず、定額的な報奨規定が採用されているのが一般的である。しかも、特許登録などの段階では数千円から数万円と低い金額になっている。
 この理由は、発明は商品化されたり他社へ使用させたり譲渡して初めて経済的価値が出るからだ。すなわち企業として収益が得られるわけであり、発明した時点や特許登録した時点で収益を生んでいるわけではないのである。収益を生むまでの研究開発作業は、企業にとってコストに過ぎず、発明はそれらコストが積み重なったものでしかないためだ。
 しかしながら、発明が後々、収益を生むようになった際には、収益に連動して報奨金が出されるようになっているかというと、そうでもない。やはり、一定額に固定されているか上限が設定されている場合が多い。収益の増加に応じて報奨金が変動するケースは非常に少数である。また、発明の生む将来収益価値を評価して報奨を出すというスタンスにはない。
 このようなことから、青色発光ダイオードのように、無限の可能性を秘めた技術ですら、研究者が訴訟を起すまで研究者自身は企業から十分な発明の対価を受けられなかったのである。
自社の規定がどうなっているのか、しっかりチェックしてみたならば、企業の姿勢がよく分かる。研究者のやる気にとっては大いに関係してくるところだ。


(ミニ用語解説)

◇通常実施権◇
 通常実施権とは排他性を持たない特許を使う権利のことである。職務発明の場合、企業は、発明者である研究者の同意の有無を問わず、無償の通常実施権を特許法三五条で保証されている。研究者への給与をはじめ研究施設や研究資金、特許権化費用などを負担した企業の発明に対する貢献を補償するためである。
 しかし、通常実施権には排他性がないため、発明者は第三者へも通常実施権を与えることができる。これを企業が回避するには、排他性をもつ専用実施権(独占的通常実施権)を得ることだ。企業は、発明者から相当な対価を持って専用実施権を得るか、または特許権を出願する権利を発明者から承継して自ら特許権者となるしかない。
 このため企業は、研究者が社員となった時点で、あらかじめ雇用時の契約や社内規定の整備によって、専用実施権の獲得や特許の権利承継を可能にするような布石を打つことになる。


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