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日本における大学発ベンチャーに関するレポート
2002.11.5 - written by ipweb analyst -


大学発ベンチャー、初の上場

2002年9月25日、アンジェスMG株式会社(山田英 代表取締役社長)が東京証券取引所に上場した。同社は、1999年12月に大阪大学の森下竜一助教授らがHGF(肝細胞増殖因子)遺伝子治療の事業化をめざし設立したバイオベンチャーだ。

今、大学の研究者の研究成果などをもとに起業する「大学発ベンチャー企業」が増えており、先述したアンジェスMG株式会社以外にも年内上場をめざす成長企業も出始めている。経済産業省によれば、大学発ベンチャー企業の数は、01年12月末で263社あり、今年8月推計では300社を超えたという。

大学発ベンチャー企業増加の背景

大学発ベンチャー企業は、大学や大学教官が持つ特許の活用を狙ったり、大学の研究成果をもとに起業するケースが多い。国立大教員の民間企業役員との兼業が可能になったこともあり、大学の教官が役員を務めたり技術顧問をする例も目立つ。バイオテクノロジーやナノテクノロジーなどの最先端分野の研究開発に専門特化した会社が相次いでいるのは大きな特徴だ。

ここ数年、大学発ベンチャーが増えた背景には、長引く不況の下で起業や雇用創出に向けて、“大学が保有している知的資源を生かすべきだ”との議論が産学官で高まったことがある。米国など海外先行国の動きも政府の対応を加速した。政府は01年5月に3年間で大学発ベンチャーを1,000社にし、2兆4千億円の民間需要と16万1千人の雇用を創出する計画を打ち出した。今年度は産学連携支援のために約8百億円の予算を確保した。

大学と民間企業の間に立って研究成果を民間に移すTLO(技術移転機関)などの整備や自社株を報酬とするストックオプション制度の導入や国立大学の施設使用など、産学連携に向けた規制緩和などの環境整備と進んだ。“象牙の塔”的色彩が強かった大学において、大学の研究室や施設を事業に使用できるようになったことは大変な変化といえる。

現在の日本における主な大学発ベンチャー

トランスジェニック(熊本大) 遺伝子解析
  アンジェスエムジー(大阪大)     医薬品開発  
  ナイトライド・セミコンダクター(徳島大)     窒化ガリウム半導体開発  
  アドジーン(東京大)     遺伝子解析  
  ナカハラ科学(岐阜大)     生理活性物質の精製技術  
  プラスト(慶応大)     野菜などの鮮度保持シート  
  ジェイウェルドットコム(早大)     インターネット通販  
  つくばナノ・テクノロジー(筑波大)     超微細粒子発生装置  

大学発ベンチャーが抱える問題点

一方、大学発ベンチャー企業がかかえる問題点も多い。なかでも、今年7月、日本経済新聞社が大学発ベンチャー226社に実施した企業アンケート調査では「開発・設備資金の不足」(51%)、「営業・販売スタッフの不足」(50%)、「技術開発スタッフの不足」(49%)と、資金調達、人材確保は大学発ベンチャーが抱える切実な問題といえる。また、財務・会計マネジメント、法務など経営面での問題点を挙げるベンチャー企業も少なくない。

海外におけるベンチャー事情

米国の実学重視の教育は世界中から研究者を集め、経産省によれば、80年から99年までに2,256が起業、特許登録数は3,719件、経済効果は409億ドルに達したという。米国では80年に連邦政府資金で研究を行った企業や大学などに対し、研究成果に特許権をあたえるバイ・ドール法が制定。これ以降、大学教育が企業のニーズを重視するようになって大学と企業の分業体制が確立された。

ドイツは東西統合による大学の研究費削減と就職難を契機に研究者の任期付き任用を実施。これが研究者の起業につながったといわれている。フランスでは兼業規制の緩和のほかに起業に失敗しても5年以内なら大学が再雇用する特別制度を創設。英国では大学自らがベンチャー資金を提供、大学施設を積極的に開放している。

アジアでもシンガポール、中国、台湾で産学官協力が進む。特に、韓国では技術移転促進法の整備でこの2年間で研究開発支援センターを200カ所以上に設置、入居企業数も2500を超えたという。

大学発ベンチャーが成功するために

前述した海外の成功事例からも分かるように、大学発ベンチャーの成功には政府の協力、支援が欠かせない。経済のグローバルな大競争時代を迎え、諸外国でも自国内に技術革新を生み出す産学官連携による環境整備が進んでいる。

しかし、環境整備が進んでいるとはいえ、日本の大学の場合、欧米と比べ論文や特許の数も少なく、優れた技術を開発していてもビジネスに結びついていないケースが多い。原因は我が国のベンチャー起業におけるビジネスの生態系の差にあると考えられる。ベンチャービジネス成功の秘訣として次の項目を挙げた。

(1) 大学の教授としてではない、企業家としての心構え
(2) 中長期的に見た優れたビジネスプラン
(3) キヤピタル投資の資金確保
(4) 経営マネージメント知識
(5) 低コストのオフィス・研究室企業とのアライアンス

優れたアイデアや技術だけではマーケットで成功するとは限らない。マクロに及ぶマーケティング戦略、どのような大企業と結んでその顧客チャンネルを使うか、さらにブランドとしてどの企業と手を組んで行くのかなど、優れたビジネスモデルプランを考えることは、ベンチャー起業にとって大きなテーマである。これらを一人で行う必要はない。ベンチャーとはいえマーケットで成功するためにはそれぞれの分野で提携関係を維持した経営が必要になってくる。



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